家には窓がついていますが、あたりまえのことなので、それが何のためなのか普段はあまり考えません。しかしよく考えてみると、窓には4つの機能が期待されていることがわかります。ひとつめは外を見ること。ふたつめは明るさを導き入れること。3つめは風を導き入れること。4つめは日光による暖かさを導き入れることです。普段なにげなく開け閉めしている窓ですが、いくつもの役目を同時にはたしているのですね。しかし、場合によってはその役目を別々に分担することもあるのです。
この住宅の敷地は狭いながらも高台の端にあり、視界を遮るものがなく、遠くまで見通せるとても眺めの良い立地です。ところが見通しがいいのは西側から北側にかけてで、肝心の南側には敷地境界ぎりぎりまで隣の家が迫っています。冬場に現地を調査に行ったら、敷地のほとんどに隣家の影が落ちていました。これではふつうに南に窓を開けても、日当たりが悪く、寒い住宅になってしまいます。
そこで、この住宅の設計では、窓の機能を分けて考えることにしました。
まず、外のいい眺めを得るために、北西の角部屋の壁に穴を開けました。景色を存分に楽しむため、窓枠もガラスもなしにして、壁をきっぱりと切り取りました。そのため、その部屋は天井はあるのですが、テラス扱いにしました。その大きな窓からは眺めが得られますが方位の関係で日射しは得られません。
次にその角部屋とリビングの間に全開できる窓を設けて、風の出入りのコントロールをしています。これが第2の窓です。
次に、居間を高い吹き抜けにして、天井近くに高窓を取りました。東面と南面にL字型につながった高窓です。その窓からは空が見え、明るい光がふりそそぎます。これで部屋は明るくなるのですが、日光は壁にあたっているだけで、床まで届きません。座っている人には日が当たらないため、暖かさを感じるにはまだ不十分です。そこで太陽光の暖かさを室内に導入するために、ソーラーシステムを用いることにしました。これまで何棟かの住宅に採用しての影
効果が分かっているOMソーラーです。南側の隣家の影も2階の屋根までは覆っていません。屋根の上には太陽光が十分に当たっています。屋根に当たった太陽の暖かさを取り込んで床暖房に利用するOMソーラーは、部屋にあたたかなお日様を導入する、いわば間接的な第4の窓なのです。下の図は輪郭を描いたものですが、右側の屋根の後に暖気を床下に送るためのダクトがあります。
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