ご自身も工業デザイナーで、なによりデザインコンセプトを大切にされるクライアントでした。まず土地の選定からお手伝いしたのですが、北側の隣地斜線制限で建物が斜めにカットされることはデザインコンセプトに反するという理由で、北側が道路になっている敷地を探しました。柿の木坂に近い住宅地で北側が私道に面する土地が見つかりましたが、敷地面積は限られていました。しかし面積の不利は設計で解決しようと話し合い、土地を購入、家づくりが始まりました。
まず斜線制限にかからない最大限の四角い箱形の輪郭を割り出し、箱の内部を薄い床板で何層にも区分けしました。眺めのよい最上階に浴室、半地下に駐車スペースと倉庫、そして玄関、居間、キッチン、寝室と全部で6層の床があります。ただし各階がぶつ切りにならないように、スキップフロア形式を採用し、居間は2層吹き抜けにして開放感をもたせています。ドアで仕切るのではなく、床の高さを違えることで空間を分けています。居間の中央は最上階まで吹きぬけていて、家の中が一つの空間として家族がどこにいてもお互いの気配を感じられるようにしました。こうした工夫により床面積よりも家全体の体積が感じられて、広々とした印象につながっています。
窓は鉄骨工場にオーダーメイドしたものです。南側と道路側が全面ガラス張りになっているので、家中が明るい光で満たされ、開放感が感じられます。隣家に接した部分はガラスブロックにして視線をカットしています。
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